いつ思い出しても冷や汗が止まらないんですよ。
あんな思いは二度とごめんだ。
あれは夏の暑い暑い日の出来事である。
畑の真ん中で一人で作業をしてたんですよ。
人気のない所で一人でね。
北海道の夏は涼しいとは言っても立ってるだけで汗が噴き出して来る位、暑かったなぁー。
その日の作業はこう。
「除草剤を撒いて」
言われたのはたったこれだけ。
でも、この一言が恐怖のどん底に落とされる事になるとはまだ誰も知らない。
除草剤なんて慣れっこですよ、何回もやってますしね。
その日もいつもと同じ様にがんがん撒いてたんですよ。
オラオラオラオラオラ!
もうぐいぐいやってたんですよね、ちまちまやってても終わらないから。
作業も順調、これはいける!って思ってた矢先ですよ。
今思っても、不思議なんだよね。
ある言葉を思い出した。
「隣の農家さん、結構うるさい人だから、間違っても除草剤を飛ばすなよ」と。
ハッと我に返った時、なぜか風が吹いた。
ビュオォォーン!
もうね、止まらない、重力の法則にしたがって落ちてきた除草剤はすぐには止まらない。
よく聞くじゃないですか、生死を分ける様な出来事がある時はスローモーションに見えるって。
あれですよ、正しくあの状態。
水の1滴1滴がスローモーションに見えるんですよ。
だってね、除草剤ですよ、除草剤。
それが野菜に掛かったらどうなるかわかるでしょ?
しかも、見た事もない人の畑の野菜。
噂では良く聞く、うるさい人。
これはもう、映画化されてもおかしくないっていう位の恐怖。
そんな夏の恐怖体験。